〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


「仕事のほうはどう? 今のところに勤めて何年くらいに?」

「今年、二年目になりました」

「そうなんだ。この間、まだご実家ではと言っていたけど、いずれはお父様と一緒にっていう方向でいるの?」

「一緒にというのは、正直、現段階ではわからないんです」

 白河先輩の表情がすっと真顔になる。

「それは、どういうこと?」

「あ……」

 話してもいいものかと言葉に詰まる。

 あまり深刻な家庭事情をせっかくの食事の場に持ち出すのは気が引ける。

 でも、中途半端に意味深な言い方をしてしまったせいで、なんでもないとも言えない。

「それって、この間の縁談が関係しているとか……?」

 なんと言ったらいいのか思案していると、白河先輩のほうからお見合いの話を出してくる。

 下手に誤魔化すのも誠実さに欠けると思い、素直に「はい」と応えた。

「そうか、やはり……」

「え……?」

「ごめん。実はこの間の様子が気になって、ご実家の医院のことを少し調べさせてもらったんだ。今回の縁談って、ご実家の病院のために? 政略結婚的な」

 家がグループで病院経営をしている白河先輩だから、ネットでちょっと調べればうちが経営難だというのは察するだろう。

「お察しの通りです。地主の方がお相手で、婚姻を条件に病院の経営を助けてくれるということになったんです」

「じゃあ、お父様ともいずれ一緒に医院に立てるのでは?」

「それが……相手方は結婚したら家に入ってほしいと言っていたので、難しいのかなと。あ、でも、病院の存続は守ってもらえそうなのでよかったです。そのために結婚も決めたので」

 なるべく大したことなさそうに見えるよう、努めて明るく振る舞う。

 表情には気をつけて笑みを浮かべてみたものの、やはりわずかに皮膚が引き攣った気がした。

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