〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
翌週、日曜日。
あまり気温の上がらない早い時間に家を出て、実家へと向かう。
先週、父に話があるから実家に行きたいと伝えると、次の日曜日ならゆっくり話ができると返信をもらった。
父は、この間の縁談のことで私が話したいと言っているのだと思っているはずだ。
まさか、まったく違う角度から婚約の話題を出されるなんて思いもしないだろう。
「おかえり。朝から暑いな」
医院を営んできた実家は、休診日である日曜と祝日の朝は比較的ゆっくりな時間が流れる。
リビングのソファ席には、父がひとり飲んでいたアイスコーヒーのグラスが置かれている。父は来たばかりの私に氷の浮かぶ冷たそうなアイスコーヒーを出してくれた。
「ありがとう。休みなのに、朝早くからごめんね」
「お前こそ、貴重な休日に朝早くから家に帰ってくるなんて大変だろう。それで……話というのは」
改まって事前に連絡をしたものだから、父も身構えてしまっているようだ。
不安に思わせるのも申し訳なく、早速本題に入る。
「うん、実は少し相談というか、報告というか……。この間の縁談の日、急病人の対応したときに途中からきてくれたドクター、覚えてる?」
「ああ、心臓血管外科と言っていたな」
「あの方、医大時代のサークルの先輩で。あの後に食事に誘われたの。そのときに、ここの心配をしてくれていて……」
なんと説明したらいいのかわからなくなってくる。
父はいったいなんの話が始まったのかと思っている様子で、私の顔をじっと見つめている。
「ここの心配というのは」
「先輩は、白河病院の後継者で」
「白河病院……? 白河病院って、市ヶ谷に本院がある」
予想通り、父は名前を聞いただけで白河先輩の家がわかったらしく、ここまで話したら回りくどい言い方はしないでストレートに伝えてしまおうと「うん」と頷く。
「結論から言っちゃうと、婚約者に立候補したいと言われて……」