〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
「この度は、お時間を頂戴しありがとうございます。突然の申し出で、莉桜さんも、お父様も驚かせてしまったことはお詫び申し上げます」
初めて〝莉桜〟と白河先輩に名前を口にされ、どきりとする。呼び方が変わるだけで、特別な関係性だと証明されたようだ。
「いえ。莉桜から白河先生の話は聞いています。本当に、莉桜との結婚を考えてくださっている……?」
「はい。こちらの医院のことも、ご事情を伺っております。その件も含めまして、莉桜さんとの結婚をお許しいただきたいと思い、お願いに上がりました」
父は一度口を閉ざし、じっと白河先輩を見据える。
「ありがとうございます。私が不甲斐ないことに、莉桜には望まない結婚を強いるところでした。でも、莉桜が憧れていたあなたとなら、快く送り出せる」
「ちょっ、お父さん!」
まさかこの場で、父に私が白河先輩に憧れを抱いていたと暴露されるとは思わず、思わず口を挟んでしまう。
となりの白河先輩がくすっと笑った気配を感じた。
「それなら僕のほうも同じです。医大時代、サークルの中でも莉桜さんには一目を置いていました。医療人を目指す自覚が強いのはもちろん、正義感が強い彼女に好感を持っていたのは確かです。医師になった彼女に再会し、仕事でもプライベートでも共に歩んでいけたらと思いました」
白河先輩の口から私の話をされ、体の内側から熱くなっていくのを感じる。
「そうでしたか」と小さく頷いた父は、どこか嬉しそうに微笑んで私を見た。
「お父様のお許しを得られるのでしたら、早急に医院の救済に動かせていただきます。同時に、莉桜さんとの婚姻に向けても段取りを」
「ふたりの気持ちが共に歩むことに向いているなら、私は賛成です」
父からの許しに白河先輩はまた丁寧に頭をさげ、「ありがとうございます」とお礼を口にした。