〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
表まで見送ると玄関を出ると、空は陽が落ちかけ暗くなり始めていた。
白河先輩を先導するように小路の飛び石を進んでいく。
小門を開け、背後を振り返った。
「今日は、ありがとうございました」
ここまで足を運んでもらったお礼を伝えながら、となりの駐車場に入る。
横から見上げた白河先輩は、私を見下ろし薄い唇に笑みをのせた。
女性としてはそこそこ身長のある私と並んでも、白河先輩の顔は上のほうにある。医大生時代、遠目から見ていたときから思っていたけれどかなり高身長だ。優に百八十以上あるのだろう。
「こちらこそ、お父様を紹介してくれてありがとう。想像通りの、娘想いのお父様だった」
「父も、ホッとしていると思います。どうぞ、よろしくお願いします」
白河先輩の車のそばまでいき、駐車場から見える医院を眺める。
肩にそっと手を置かれ、顔を上げた。
「莉桜とお父様がこの診療所に一緒に立つ日のために、必ず支えると約束する。その日を目にすることを、今から楽しみにしてる」
「白河先輩……」
胸がいっぱいになって言葉が出てこない。
じっと顔を見上げたままの私に、白河先輩はふっと笑みをこぼした。
「莉桜には、次会うまでに課題を出しておこうかな」
「課題って、なんか懐かしいですね。サークル時代みたい」
白河先輩と私が入っていた医療ボランティアサークルでは、活動の中で上級生から下級生に課題が出されることがしばしばあった。
当時を思い出してくすっと笑う。