〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
「大丈夫か? そんな緊張しなくて大丈夫だよ」
週末、土曜日。
お迎えにきてもらった車内で、悠真さんは助手席に座る私を見て笑う。
見てわかるくらいにガチガチなのだろう。確かに緊張で表情も固まっている気がする。
体にも自然と力が入っていて、悠真さんがくすくす笑うのを見てふっと力が緩んだ。
「そう言われましても……無理です」
「心配してるようなことはなにもないよ。両親は莉桜と会って話すのを楽しみにしてる。この間、莉桜が訊いてきたようなことを気にすることはないから」
「はい……」
車は白金の高級住宅街へと入っていく。どの家も敷地面積が広く、高い塀に囲まれている家が多い。
今日の顔合わせはどこか予約をして顔合わせ的に食事でもするのかと思いきや、ご実家にお邪魔する予定だと聞きまた身構えた。
その上、向かう先は白金という一流の高級住宅街。ますます同じ医師だとしても身分の差を感じる。
いったいどの大豪邸だろうと窓からキョロキョロしていると、白く高い塀に囲まれ、重厚な電動ゲートを備える家の前で車が停車する。
「こちら、ですか?」
「ああ。このまま中に車を停めるから少し待って」
車のナンバーかなにかで把握されているのか、電子ゲートが開いていく。驚いている間に中に入り、すぐの駐車場に車は停められる。
電子ゲートから中に入ると、奥にある立派な住居に向かってアプローチがあり、そのまま車でも向かえるようになっている造りだ。とんでもない豪邸にすでに圧倒される。
周囲に駐車されている車も、国内外の高級車のみだ。
車を停めた悠真さんが先に降車し、助手席側まで来てくれる。ドアを開けてもらい「すみません」と車を降りた。
「莉桜、いつも通り」
強張っている表情を見てか、悠真さんが私の頬を指でつつく。
「変な顔になってますか」
「変ではないけど、いつもより硬いかな」
悠真さんは私を先導して奥の建物に続くアプローチを歩いていく。見える住居は、白い外壁の直線的な建物。庭を見渡す窓も大きい。近代モダンと言えるデザインだ。
「悠真くん!」
奥の建物から誰かが出てきたのが見えたと思ったら、その姿はこちらに向かって駆けてくる。
近づいてきた顔を見て、心の中で『あ……』と声が出た。