〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
現れたのは、悠真さんと再会した救急対応のときに会った悠真さんを探しにきた女性。今日はブルー調の花柄の涼し気なワンピースに日傘を差している。日焼け対策も万全で、腕にはしっかりレースのアームカバーもつけている。
彼の実家から出てくるということは、ご両親含めかなり親交があるのだろう。
「昨日、ドイツから帰ってきたの。お土産を届けに寄ったんだけど、まさか悠真くんに会えるなんて!」
すぐ目の前まできて弾んだ声を出していたと思ったら、私を目にした途端〝なんであなたがこんなところにいるの〟という目で見られる。
「俺も今日は実家の両親に会う約束があるんだ。彼女を紹介しに来た」
悠真さんがそう言うと、彼女は訳がわからなそうに小首を傾げてみせる。
「紹介……?」
「婚約したんだ」
悠真さんがそう口にすると、彼女は私へ目を向け、ふわりと柔らかい笑みを浮かべてみせた。
「わたくし、西園寺美玲と申します。悠真くんとは、古くから家族ぐるみのお付き合いをしてきています」
想定外の自己紹介に、慌てて頭を下げ「小宮山莉桜と申します」と名乗る。
「この度はご婚約、おめでとうございます。また改めて、ゆっくりお話しましょう」
美玲さんは、「では」と私に言い、悠真さんにも「悠真くん、またね」と立ち去っていく。長いアプローチを門まで向かっていき、慣れた様子で出ていった。
悠真さんが婚約をしたと伝えた瞬間、彼女は負の感情をむき出しにするのではないかと警戒した。
初めて会ったとき、悠真さんと一緒にいた私に対して敵意のようなものを感じたからだ。
でも、今の様子はあのときとは違った。祝福の言葉も躊躇いなく出てきていたし、もしかしたら私の思い過ごしかもしれない。
「莉桜、おいで」
「あ、はい」
美玲さんを気にして振り返っていた私を、一歩先を行く悠真さんが呼んだ。