〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


「まさか、悠真のお相手が小児科医なんて、私も嬉しくなっちゃうわ」

 ガラス張りで庭と一体化しているような開放感のあるリビングで、向かいのソファにかけるお母様の声は弾む。

 数十分前、緊張が解けないまま対面した悠真さんのご両親は、揃ってにこやかに私を迎え入れてくれた。

 長身できっちりと黒髪をセットしたお父様は、悠真さんが年を重ねればこんな雰囲気になるだろうと確信を持てるほど、お父様似だというのがわかった。

 お母様はにこにことして感じがよく、前下がりボブが似合う小柄でかわいらしい印象の方。『緊張しなくて大丈夫よ』と会うなり気遣ってくれて優しかった。

 悠真さんが私のことを事前に話してくれていたおかげで、堅苦しい挨拶はほとんど時間を要さなかった。

 悠真さんのお父様はもともとは悠真さんと同じく心臓血管外科医で、現在は現場には出ず病院経営のほうに回っているという。

 お母様はなんと私と同じ小児科医の現役で、大先輩というのがわかった。

「はい、私も驚きました。ぜひご指導いただきたいです」

「やだ! ご指導なんてもう~!」

 高い天井のリビングで、お母様が楽しそうに笑う声が響き渡る。

「一度、莉桜さんのお父様も含め、食事会をしよう。いつ頃から一緒に住む予定なんだ」

 お父様が悠真さんに訊く。

「とりあえず、もう新居は探し始めてます」

 彼からまだ聞いていなかった話に、心の中で『そうなんだ……早い』と呟く。

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