〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
「そうか。挙式はどうするのかとか、決めることも多いと思うが、予定を調整する都合上、早めに相談してほしい」
「わかりました」
そんな男同士のやり取りを黙って聞いていたお母様は、向かいの私に「莉桜さんは──」と話を振る。
「挙式をするなら、どんなものが好みかしら? スタンダードな教会式? 品のある美人さんだから、和装も似合いそうよね」
お母様は楽しそうに言う。
婚約して着実に婚姻に向けて進んでいるけれど、挙式をするということはまったく考えていなかった。
私の中で、父の医院を助けてもらうために始まった話だから、婚姻ということ自体がひとつのゴールだった。でもそうじゃない。結婚をすれば、そこからが新たな人生のスタートなのだ。
「それか、身内だけで海外で挙げるのもいいわね。モルディブとか、綺麗な海で挙げる式も素敵だし、教会式なら、ヨーロッパのほうでもいいわね」
「はい。まだ、ぜんぜん実感が湧いていなくて、イメージできていないんですけど、ご相談させていただきたいです」
「そうね、今から楽しみだわ」
お母様はソファを立ち上がり、空いたティーポットを手にする。
「まだまだ莉桜さんとお話したいし、お夕飯食べていってほしいわ。予定は大丈夫?」
お母様はそう言いながら広いリビングをキッチンへと向かっていった。