〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
悠真さんのご実家で夕食をいただき、車に乗り込んだのは二十時を前にした時刻だった。
「すごいご飯でした……」
ついそんな感想が出てくる。
夕食を食べていってと言ってもらいお言葉に甘えたけれど、お母様は知り合いのシェフを呼んでレストランのような食事をご馳走してくれた。
白金の大豪邸から始まり、帰るまで圧倒されっぱなしだった。
「口に合った?」
「はい、とっても。美味しかったです」
「それはよかった。母が気に入っているだけあって、美味しい食事を出してくれるシェフだからね。莉桜が喜んでいたと伝えておくよ」
夜の闇に包まれた閑静な住宅街を、悠真さんは私の住まいに向かって走り出す。
「あの、ご実家にいるときに少し話題に出ましたが、もう、新居を探しているって」
「そう、そろそろ見ておこうと思って、良さそうなところを何か所か。ふたりの勤務先からなるべく近いところで探してもらってる」
「ありがとうございます。全部お任せになってしまって、申し訳ないです。私にやれることはなにかないですか」
何から何までやってもらっているのでは悠真さんだけ負担が大きい。
「じゃあ、あとで選んだ物件を送るから、莉桜に選んでもらおうかな」
「えっ、いきなりそんな重大な役割ですか?」
「俺はどれもいいと思ったところだから、莉桜の好みで絞ってもらって。選んだら実際に見に行ってみよう」
「わかりました。では、見てみますね」
新居が決まったら、引越しの準備も始めないといけない。それに、新しい住まいで必要なものも準備しなくてはいけないし、手続き関係も必要になってくる。
私にできることは積極的に進んでやるようにして、悠真さんばかり負担にならないようにしなくてはならない。
とりあえず、少しずつ荷造りは始めておこう。そんなことを思っていた。