〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
「たとえばさ、女子って、よくバッグになんかつけたりとか、いろいろ装飾品が好きだろう? 莉桜はそういうのも好きじゃないのかしてなかったし、余計なものを持たないってところで物が少ないって繋がる」
悠真さんは付け足すように「だから、部屋にぬいぐるみとか置かなそう」と言った。
「たしかに、ぬいぐるみって飾ったことないかも……あ、でも、かわいいものを毛嫌いしているとかではないんですよ。なんて言うのかな……持つ機会がなかった? みたいな感じです」
「持つ機会? それって?」
「なんだろう、たとえば、バッグにつけるキーホルダーとかチャームだったり、ぬいぐるみだったり、どこかに行って買った思い出みたいな感じありませんか? 私、友達とかとそういう思い出も学生時代ってなかったので」
友達がいなかったわけではないけれど、学校で会って一緒に過ごす程度の付き合いだった。
休日にどこかに遊びに行ったり、そういう思い出はほとんどない。
「彼氏とは?」
「えっ、いなかったです、彼氏なんて」
思わぬ方角からの質問が来て、つい声の調子が乱れる。
悠真さんは手を止めじっと私を見つめる。口角がほんの少し上がっているのを見て、またどきりとした。
「へぇ、意外。莉桜のこと、タイプって言ってる奴も結構いたから」
「そんなの、全部冗談ですよ。真に受けちゃだめです」
「そういう自覚なさすぎのところも、男から見たら魅力のひとつってこと」
「もう、いじらないでください!」
荷物が少ないという話題から話が広がりすぎて、おかげ様でたじたじに。
てきぱきと次々と段ボールを開けていく私を、悠真さんがにこやかに眺めながら作業をしているのが横目に入った。
「あの、食器とか、ひとり暮らしのためどれもひとつずつしか持っていなかったので、マグカップくらいしか持ってこなかったんです」
「ああ、そうだよな。キッチンで必要なものとか、これが一段落したら一緒に見に行こう」
「そうですね」