〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


 え……?

 美玲さんは冷笑を浮かべ、哀れむような目で私を見つめる。

「まぁ、詳しくは教えられないですけど、悠真くんのほうにもメリットがあってのことみたいだし、仕方なかったのよね……」

 彼女のひとり語りについていけず、ただ黙って話を聞いていることしかできない。

 でも、どうやら祝福は勘違いだったようだ。

「だって、悠真くんは私と結婚するつもりだったから。彼の気持ちは私にあるの」

 衝撃的な告白を受け、目の前がぐらぐら揺れたように見える。

 彼女が、悠真さんと一緒になるはずだった相手。古くから家族ぐるみの付き合いをしてきたとも言っていた。

 悠真さんは婚約を急かされて困っていると言っていたけれど、本当は家同士で決まっていた話なのかもしれない。

 だとすれば、ぽっと出てきた私は完全に邪魔者だ。

「すみませんでした。私、そういった事情をなにも知らずに……」

 私が悠真さんと美玲さんの仲を引き裂いてしまったのなら、多少なりとも責任はある。

 自然と謝罪の言葉が出てきた私を、美玲さんはキッと睨み付けた。

「勘違いしないで。謝ってなんて思ってないわ」

 美玲さんは強い口調で言い、私へと更に一歩詰める。近距離で目と目が合うと、それまでとは一転、にこりと微笑まれた。

「お幸せに~」

 耳の奥に彼女の高い声がこびりついてしまったのか、去っていった車が見えなくなってもいつまでも耳に残っているようだった。

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