〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


 同棲が始まってから明日で一週間。今週もあっという間に過ぎ去っていった。

 週の真ん中、水曜日には、全員の都合がつき急遽両家揃っての食事会が開催された。

 婚姻届を提出する前に一度は親同士に会う機会をつくりたいと思っていたら、とんとん拍子に予定が決まり話が進んだ。

 そのおかげで、今日は仕事後に待ち合わせをして一緒に婚姻届を出しに行くことになっている。

 いよいよ届を提出すれば本物の夫婦になる。同じ住まいで生活を始めて一週間が経とうとしているけれど、未だ婚姻を間近にしているという実感が薄い。

 役所に行って婚姻届を提出すれば、そこでやっと自覚が芽生えるのだろうか。

 時間通り退勤し、いつも通り帰り道を急ぐ。

 悠真さんとは、住まいの最寄り駅で待ち合わせて区役所に向かう予定だ。

 改札を通り、帰りの電車がくるホームへと上がっていく。夕方の帰宅ラッシュにさしかかる時間帯は、駅は多くの人で賑わっている。

 エレベーターを使わず階段を上がっていくと、ちょうど乗る電車が到着するアナウンスが聞こえた。踊り場から後半の段を小走りで駆けていった、そのとき──。

「あっ──」

 最後の階段に足をかけて上がったところで、突然目の前に現れた人と肩が強くぶつかる。

 咄嗟にどこかに掴まることもできず、足を踏み外す。膝から階段に打ち付け、そのまま横倒しで転がっていく。

 周囲から悲鳴のような声も聞こえる中、体を打ち付けながら身を任せるしかなかった。

 全身が痛い。集まってきた人々の声が少し遠くに聞こえていた。

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