〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
いっときの意識障害はあったものの、MRIの診断結果も特に異常はなく、腕と脚の打撲程度でケガは済んだ。腕は右手を傷めてしまったからしばらくは不自由かもしれないけれど、骨折していなかったのが不幸中の幸いだ。
検査と処置を終えると、悠真さんの運転でマンションに帰宅した。
手当をしてもらった左足、右腕が痛々しい。
「莉桜」
助手席のドアが開き、悠真さんが手を差し出す。
「すみません、ありがとうございます」
こんなときなのに、手を取るのに緊張する。ケガをしたから気遣ってもらっているだけなのに、変に意識したらおかしい。
「いった……」
「右足に重心を置いて歩いたほうがいい」
「はい」
急に不自由になったせいで、うまく庇った動きが難しい。
「莉桜、動かないで」
左腕を取ってくれている悠真さんが突然、私を横抱きで持ち上げる。
「わっ、えぇ!」
「運んじゃったほうがいいだろう」
「そんな、重いですし、大変ですから!」
騒ぐ私を気にもせず、悠真さんは軽々私を運んでいく。地下駐車場からマンションエントランスホールまで専用エレベーターで上がり、居住階の用のエレベーターに乗り換える。
エレベーターホールで居住者とすれ違い、少し不思議そうな視線が送られていった。
「悠真さん、部屋まで歩けますので」
「いや、初めからこうしておくべきだった。できる限り患部に圧はかけないほうがいい」
そう言われてしまうとごもっともで、これ以上自分で歩くから下ろしてほしいとも言えない。