〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


 駅の階段から転落なんてしていなければ、今日は婚姻届を提出後、外食をして帰宅をする予定だった。

 それが、とんだ展開となり、夕食は悠真さんが自宅にある食材で作ってくれた。

 鮭とホウレンソウのクリームパスタは、バターと粉チーズが濃厚で、ブラックペッパーがしっかり効いていて美味しかった。

 冷蔵庫にあるものをみてメニューを考えられるのはすごいなと思ったし、料理もできるなんてどこまでも完璧で参る。

 利き手の右手が手の甲まで手当てをしてもらっていたため、左手でスローペースの食事となった。

 私の様子を見た悠真さんがすぐに食べさせると言い出したけど、普段より時間はかかっても自分で食べられると遠慮した。

 ただでさえ迷惑をかけているのに、食事くらい自分でしないと悠真さんの負担ばかり増えてしまう。

 しかし、食事よりも時間がかかるのは入浴だった。

 今日は手当をしてもらっている箇所を極力濡らさないよう、注意してシャワーを浴びることに。左手だけで髪を洗うのが難しく、いつもよりも倍以上の時間がかかって入浴を終えた。

 手も足も不自由なく生活できているのがどれだけありがたいことなのか、なにか行動するたびに身を持って実感する。

 着替えを終えて髪をタオルドライしていると、バスルームのドアが外からノックされた。

「莉桜、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。今出ます」

 髪を拭きながらノックされたドアを出て行く。私が長時間浴室を占領していたから、悠真さんを待たせている。

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