〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
「もうケガは大丈夫なのか」
「うん、もうぜんぜん。普通に日常生活送れてる」
父と一緒にキッチンに入り、食器棚から手ごろな皿を取り出して買ってきた総菜を出していく。
父の好きな酢豚や、デパ地下ならではのオシャレなサラダも買ってきた。
「お父さんのほうは、最近はどう? 変わらず?」
総菜を盛り付けた皿を持ってダイニングテーブルへ運ぶ。父はお米を炊いてくれていたようで、ふたり分盛り付けていた。
自分自身の環境の変化と新生活で、ここ一か月父の医院の様子を聞けてなかった。
悠真さんからは、父の医院の負債に関しては滞りなく解決してもらっていると報告を受けている。
経営の心配がなくなってから、父の心理的な面も含め、医院は好転しただろうか。
「ああ、変わらずだよ」
「特に問題はない感じ?」
「そうだな」
どことなく父の様子に違和感を覚える。
病院の救済が動き始めたとき、父は表情も晴れやかだったし、もっと声に覇気があった。
それが今は、どこか上の空で、そしてあまり話したくなさそうにすら感じる。
単なる自分の思い過ごしだろうか。
「さぁ、食べよう」
「うん」
ただ疲れているだけかもしれない。食卓につく父を目に、あまり深く考えないようにしようと気持ちを落ち着けた。