〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


「冗談はよしてくれ。それに、仕事中に訪ねてくるのは感心しない」

「だって、悠真くん会う約束もしてくれないじゃない」

「当たり前だろう。妻がいるんだ。女性とふたりきりで会うなんてできない」

 妻と言った途端、美玲の表情が曇ったのを目撃する。でも、それも気のせいと思えるほど一瞬で消え去る。

「じゃあやっぱり、私が悠真くんと話すためにはこうするしかないってことでしょ?」

 確かに、ふたりで会う気はないとは言ったが、そういう意味ではない。そもそも個人的に会って話す必要すらないという意味だ。

「……で、用件は」

「その〝妻〟のことで、見てもらいたいものがあって」

 そう言った美玲はハイブランドのハンドバッグから白い封筒を取り出す。

「これ、見て」

 手渡され封書の中身は、写真らしきものが数枚。そこに写っているものに釘付けになる。

「その女性、悠真くんの奥様に間違いないでしょ?」

 時間帯は夜間と思われる写真。どこかの店舗から出てきたとみられる男女が写っている。男性の方はサングラスをしているものの、顔がはっきりと写っている。女性の方はレンズに背を向けているものの、背格好は莉桜そのもの。身に着けている服も見たことがある。

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