〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
なにが不貞の証拠だ。
笑みを浮かべ、平気でそんな嘘を口にする姿を思い出すと、苛立ちが込み上げてくる。
オペ前の手洗い中、つい指先を洗うブラシに力が入る。
美玲と別れてからすぐ、知り合いの興信所に調査を依頼した。かなりの腕利きだから、なにか悪事を働いていればすべて報告されるだろう。
莉桜と入籍してから半月、一緒に住み始めては間もなく一か月が経とうとしている。
状況的に急ぐような形で進められた結婚も、少しずつ〝夫婦〟としての形を模索しながら送っている。
同棲後すぐ、莉桜がケガをするというトラブルに見舞われたものの、それがきっかけでどことなく互いにあった壁が徐々に壊れていった。
莉桜はあまり人に頼ることを知らない性分で、ケガで不自由をしていても自分でなんでもこなそうとしていて。
そんな姿につい手を貸したくなったし、もっと頼りにしてほしいとも思った。
次第に芽生えた庇護欲は、独占欲も目覚めさせ、いつしか莉桜と本物の夫婦になれたらと思うようになっていた。
初めは彼女を助けたい、自分にとっても結婚は好都合、そんな利害の一致で一緒になった。
でも今は、形だけではない。心が繋がった関係を求めている。