〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
7、暴かれる真実


「佐藤ののちゃん、どうぞ」

 診察室の扉を開け、待合室の椅子で不安そうにしているののちゃんに呼びかける。

「きょうはおんなのせんせいなの……?」

「うん、今日はいつもの先生じゃなくて、私が診るね」

 ののちゃんは同行してくれたおばあちゃん、佐藤さんを見上げる。

「よかったねぇ、のの。女の先生は初めてだね」

「うん! せんせいのふく、かわいいねー」

 ののちゃんは私が着ているキャラクター柄のスクラブに注目してくれたらしく、自ら診察室に入ってきてくれる。

 小児科医の私は、普段から子どもに人気のキャラクターの総柄スクラブを身に着けている。

 父は〝THE医者〟って格好で診察をしているから、子どもの患者にとってはちょっと怖かったりもするのだろう。

「先生もこちらで診察することになったの?」

 ののちゃんと共に診察室に入ってきた佐藤さんが訊く。

「はい、週に数回ですけど、小児専門で私が」

「そうなのね~! でも、よかったわ。小宮山先生のところが変わらずで。病院閉められたら、家族でどこに診てもらおうかって、家族会議だったわよ」

 佐藤さんに声をかけられてから、かれこれ一か月半が経つ。

 父が医院を畳むと佐藤さんから聞いたときは、衝撃が強すぎて頭の整理がつかなかった。

 でも、今こうして父の医院を手伝えていることはなによりもありがたい。

「喉は少し赤いですね。今晩あたりに熱が上がってきたら、また明日インフルエンザの検査をしようと思います。インフルエンザも先週あたりからぽつぽつ出てきているので」

 美玲さんからの条件を呑み、悠真さんの元を離れてから一か月……。

 あの日、マンションを出て彷徨った私は、ビジネスホテルに行き着いた。数日そこから仕事に向かい、その後、現在はマンスリーマンションに滞在している。

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