〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


 悠真さんからは何件もの着信、【もう一度ちゃんと話そう】というようなメッセージが繰り返し入ってきていたけれど、一切連絡は返さなかった。

 スマートフォンが彼の名で着信するたび、メッセージを受信するたび、別れを告げたあの日の光景が蘇り何度も涙がこぼれた。

 本当のことを伝えてしまいたい。別れたくなんてなかったと知ってほしい。何度もそんな思いと葛藤し、そのたびに思い留まった。

 しばらく続いていたメッセージも、無視を決め込むと一週間を過ぎる頃から回数が減り、二週間もすればぴたりとなくなった。

 別れ際、離婚届を書いたら連絡してほしいとお願いした。次に連絡が来るときはそのときだろうと思っている。

 私が別れる意思を示したと知ったからだろう。

 悠真さんの元を離れて一週間もしないうち、西園寺医療機工株式会社の名で実家に封書が届いた。

 買収の話は白紙撤回になるという通知を受け、父は動揺しながらも心底安堵していた。同時に、また悠真さんが助けてくれたのかと訊かれたが、それについては違うと返答した。

 悠真さんと離婚の運びになっている現状を、父はまだ知らない。

 彼から連絡がきて、書面上で婚姻関係にピリオドが打たれたら、父にも報告しようと思っている。

 午前の診療を終えスマートフォンを手に取ると、ポップアップ画面の中にメッセージアプリの受信が上がっている。

 そこに見えた久しぶりの名前に、鼓動がひと際大きく音を立てた。

【今回の件で話がしたい。来週、十二月二十三日、うちの開院記念式典がある。お義父様と揃って出席を願いたい】

 久しぶりに届いた悠真さんからのメッセージ。一緒に、招待状の資料も添付されている。

 まだ正式に離婚の手続きを踏んでいないため、私にはこの式典に出席する義務があるのだろう。

 でも、この日にきっとすべての決着がつく。

【わかりました。伺います】

 それだけの返事を返した。

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