〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
「すごい規模の記念式典だな。さすが白河病院だ」
となりの父は感心したように呟く。
「うん……」
スーツやドレスアップした女性たちが行き交い、そこらじゅうで談笑を繰り広げている。
その中に、挨拶をして回る美玲の姿を見つけた。
今日はワインレッドの胸元が大胆に空いたドレスを着て、長い髪は綺麗にアップにしている。悠真さんのパートナーとして、完璧なドレスアップだ。
無意識のうちに彼女の目に留まらないよう隠れてしまう。
美玲さんは今日の式典に私が招待されていることを知っているのだろうか。
もし知らないとすれば、どうしているのかと不愉快に思うはず。でも、今日が正式な離婚手続きの日だと話せばわかってもらえるだろう。
「莉桜、悠真くんだぞ」
父に言われて目を向けると、会場の奥で来賓と挨拶を交わしている悠真さんの姿が見えた。
いつもさらりと流れている黒髪をきっちりとセットした悠真さんは、少しだけ知らない人に見える。
光沢のあるブラックスーツが見事にきまっていて一段と眩しい。
「いいのか、行かなくて」
なにも知らない父は、私が悠真さんの元へ行かなくていいのかと思うのは当然だ。
「うん、忙しそうだし、今はやめておく」
悠真さんのそばには、お義父様、お義母様の姿も見える。私との婚約を歓迎してくれたご両親にも、最後にお礼と謝罪を伝えたい。
会場の賑やかさが増していく中、司会進行のアナウンスが入り式典が開式する。
私と父は会場の隅のほうの席に場所を取り、静かに始まった祝賀式典を見守った。