〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する
「莉桜の勤め先での評判を落としてみたり、それがうまくいかなければ直接莉桜を傷めつけてみたり」
「悠真くん、全部誤解なの! 私じゃない!」
美玲さんは訴えかけるように悠真さんに迫る。でも、悠真さんは表情ひとつ変えずに美玲さんを見下ろしている。
「見苦しいぞ。証拠は全部揃ってるんだ。潔く謝罪したほうがまだ賢い」
「だからっ! 私はなにも知らない!」
ここまで言われても断固として認めない美玲さんに呆れたのか、悠真さんは深く息をつく。
「だったら、これを見てもらおう」
悠真さんが「映像を」と声をかけると、さっき式典中にも使っていた会場のスクリーンになにかが映し出される。
監視カメラのような映像には、端のほうに父が映し出されている。
誰かと会食している様子の映像は、倍速で進められていくとそのうち父はテーブルに突っ伏し始める。
「これ……」
私に心当たりがあるのを察した悠真さんは、そっと触れた手で背中をさすってくれる。
映像では、眠ってしまった父の手を取り、書類に指印させている様子が映し出されている。
「挙げ句の果てには、西園寺がメディカルセンター建設を計画して、莉桜のお父様の医院を吸収しようとしていた。その件についても調べはついている。こうした不正なやり方で契約を取ったことも、証拠として揃ってる」
居合わせた人々がざわめき、美玲さんに視線が集中する。
向こうから「美玲!」と叫んだ年配の女性がいて、目を向けると夫婦と思われるふたり組が真っ青な顔をして立っている。あの様子では、美玲さんのご両親だろう。
そんな状況も気にせず、美玲さんは悠真さんに詰め寄る。
「違うの、悠真くん話を聞いて! 私は悠真くんのために!」
「俺のため? 俺のためを思うなら、今すぐ視界から消えてくれ」
悠真さんに飛び込もうとした美玲さんを、駆け付けた警備員が取り押さえる。
「放しなさい! わたしを誰だと思ってんの⁉ 放せ!」
頭を振って必死に抵抗しているせいで、綺麗にアップにまとめていた髪が乱れ落ちていく。
「悠真くんと結婚するのは私なのよ! そんな平凡な女医なんかじゃない!」
最後の最後まで私に牙をむく美玲さんに、悠真さんが落ち着いた声で「美玲」と呼びかける。
「お前には一生、俺が莉桜に惚れた理由はわからないだろうな」
そんな言葉をかけられた美玲さんは、呪いが解けたようにハッとした表情を見せる。嗚咽しながら会場から連れ出されていった。