〝選ばれるはず〟だった令嬢がいるのに、彼は私と契約結婚する


 天井までの大きなガラス窓の外、このホテルに向かっているときに降っていた雨はいつの間にか雪の結晶に変わっていた。

 漆黒の空から無数に舞ってくる白い埃のような塊を、飽きずにいつまでも見つめている。

 向こうのほうで入り口のドアが開かれる音がし、悠真さんが姿を現した。

「まだ飽きずに雪か」

「はい、綺麗で」

 数分前、通話で悠真さんが部屋を出ていく前からひとり雪を見上げていた。

 悠真さんも私の横まできて窓の外を見上げる。

「ほんとだ、綺麗だな」

 祝賀会の終わりにあんなことがあって、悠真さんは事前に取っていた部屋に私を連れ帰った。

 正直、考えもしない展開だった。

「美玲さんがいろいろしていたことは、いつから……?」

「一度、莉桜が不倫していると写真を持ってきたことがあったんだ」

「え? 私が、ですか」

 まったくもって身に覚えがない。要するに、他の件と同様に仕組まれたものなのだろう。

「莉桜と背格好がよく似ていて、写真をひと目見たときは正直一瞬驚いた。でも、どんなに似せてきても見間違うはずがない。これは偽造しているとわかって、そこから不審に思い始めていた」

 私の知らない間にそんなことがあったと教えられ、いくつもの計画で貶めようとしていたことに愕然とする。

「極めつけは、莉桜が理由もなく離婚したいと言い出した。間違いなく美玲が関わっていると思って調べて、西園寺家がお義父さんの医院を買い上げようと動いているのを知ったんだ」

「そうだったんですか……美玲さんは、どうしても悠真さんと一緒になりたかったんですね」

 悠真さんはそれに関してひと言も言葉を発さない。

 代わりにそっと背に手を回し抱き寄せた。

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