結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 冬馬さんが不在の日々は、やっぱり寂しい。
 結局のところ、週末は公佳に会う以外はすっかり引きこもって過ごしていた。

 新しく公開された映画があったけれど、ひとりで行くのは味気ない。性懲りもなく、どうせなら冬馬さんと一緒に見たいと思ってしまった。

 油断したらぼんやりとしがちだが、帰国した彼にあきれられたくない。週明けからは、いつも以上に気を引き締めて仕事に専念した。

 定時を少し過ぎ、会社を後にする。

「ちょっと、あなた……青山瑞希さん?」

 エントランスを出て周囲を見回し、数歩進んだところで声をかけられた。

 立ち止まって、背後を振り返る。
 そこにいたのは、冬馬さんの元婚約者の笹島奈央だ。

「そうですが?」

 どうして彼女が私を呼び止めたのかがわからず、思わず身構える。

 私の二メートルほど手前まで距離を詰めてきた彼女は、値踏みをするように無遠慮に私を見てきた。

「冬馬さんと結婚したのは本当?」

「え、ええ」

 なにが目的なのか。少なくとも笹島さんは、私に対していい感情を抱いていないようだ。

「私のことは知ってるでしょ?」

 知っていて当然だとも言いたげな、ずいぶん高飛車な雰囲気だ。

「笹島奈央さん、ですね?」

「そうよ。今日はあなたに話があってきたの」

 事前の連絡はなし。こちらの都合を配慮する気も見られない。冬馬さんも、毎回こうして押しかけられていたのだろうか。

「どういったご用件でしょうか」

 ともかく意図がわからず困惑をするが、彼女にはうろたえる姿を見せたくない。いっさい視線を逸らさずに見つめ返した。
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