結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「冬馬さんを、私に返してほしいの」

「え?」

「ほら、私と冬馬さんは婚約していたでしょ? 彼の非で解消になってしまったけれど……」

 よほど辛いのか、瞼を伏せた笹島さんの体は小さく震えている。

「あんなの、本気じゃなかったのに」

 婚約破棄を告げたときの彼女が、ずいぶん感情的になっていた姿を思い起こす。冬馬さんに向けた視線も、憎しみすらこもってように見えた。

 勢いで、言ってしまったというのだろうか。そうだとしても、今さらその主張は通らないと思う。

「本当は、冬馬さんが引き留めてくれるのを待っていたの。でも責任感の強い彼は、自身の非を責められたら許してくれとは言えなかったと思うの。あれから、罪悪感でいっぱいだったはずよ」

「はあ」

 本当に、そうだろうか。

 感情を昂らせる彼女に対して、冬馬さんはいたって冷静で……というより、冷淡で不遜な態度だったはず。
 その後だって、塞いでいる様子はまったくなかった。

「とにかく、浮気のことはもう怒っていないし、私は仕事をセーブして彼のサポートをする準備もしてるわ。それに、グランドコスメにとってパパの会社は切っても切れない関係のはずよ。私が冬馬さんと結婚したら会社へのメリットも大きいし、なにより彼が進藤ホールディングスを継ぐときに後ろ盾にだってなれるわ」

 疑いと呆れの気持ちでいたけれど、グランドコスメとの関係や冬馬さんの将来を仄めかされたら聞き流せない。

 ふたりが婚約していた頃の冬馬さんの様子からは、とても恋愛感情を伴っていたようには思えなかった。典型的な政略結婚だと、周囲も見ていたはず。

 会社の規模でいえば、進藤ホールディングスの方が圧倒的に大きい。とはいえ、芸能事務所のトップであるネクストアーツプロダクションにそっぽを向かれた、替えが効かないのかもしれない。
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