結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 ひと悶着はあったものの、その後、会議は南さくらを起用することで話がまとまった。
 今後の話し合い次第となるが、うちとしてもネクストアーツプロダクションとの関係はつないでおきたいところ。ただ、これまでほど密にというわけにはいかなくなるだろう。

 副社長に関しても、お咎めなしとはならないはず。社内の人間の、それも社長に関するマイナスに捉えられかねない噂話を、積極的に外部に漏らしている。笹島さん以外にも話しているんじゃないか、という疑念も拭えない。

 本人は嫌がらせ程度の気持ちだったのかもしれないが、まわりまわってグランドコスメの信頼を失うことにもつながる。それだけに、冬馬さんはこの事態を重く見ていた。

『意図的に、足を引っぱるような人間はいらない』

 そう公言した彼は、この話をすぐさま会長まで上げている。口の上手い副社長に言い逃れさせないよう、グループの上層部を巻き込んだ大事にして対処する。副社長の地位をすぐに追われることはないかもしれないが、これまでのような横柄な態度はもう許されない。さらなる出世の道も、閉ざされたに等しいだろう。

 紛糾した会議の影響で、今夜は帰宅が少し遅くなってしまった。朝からずっと気が張りつめていたのもあり、ベッドに座った途端に脱力する。

 いつの間にか、冬馬さんと暮らすこのマンションが私の一番安心できる場所になっている。

 もう何年もひとりを満喫していたはずなのに、彼との生活がすっかり私を変えてしまった。

 早く、帰ってきてほしい。
 以前の自分なら考えられないことだけど、そう願ってしまう。

『私が愛しているのは、妻の瑞希だけ。いくらメリットを示されようと、彼女と別れるつもりは微塵もない』

 演技とはいえ、皆の前でそう言ってくれてうれしかった。

 冬馬さんには大きな恩がある。だから周囲から嫉妬や哀れみ、嫌悪の視線を向けられるのも私の役割のひとつだと納得していた。

 平気だったとは言えないけれど、契約の関係だから、深く考えても仕方がない。気にしなければいいと、見ないふりを押し通して。

 けれど、そういう視線に知らないうちに傷つき、自信をなくしていたのかもしれない。

 嘘でもいいから人前で認めてもらえて、救われた気分になった。
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