結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 食後のコーヒーが運ばれてきて、もうしばらくゆっくりとする。

「ほら、瑞希」

 すっかりくつろいでいたところで、冬馬さんがさっき作ったばかりの香水を差し出してきた。

 首をひねっていると手を取られ、そこに小瓶を握らされた。
 触れられたことにドキリとしつつ、どうして?と視線で尋ねる。

「瑞希をイメージして作った。使ってくれるとうれしい」

 そんな意味深に言われて、瞬時に頬が熱くなる。だってあのとき冬馬さんは、『優しい香りだな』『華やかだ』なんて言いながら選んでいたはず。

 私をかなり好意的に見てくれているのだろうか。そこに恋愛感情をないはずなのに、彼の甘い言動に勘違いしそうになる。

「あ、ありがとう」

 わずかに蓋を開けて、鼻を近づける。

「いい香り」

 こんなに柔らかな香りが彼の中の私のイメージだと思うと、どうにも気恥ずかしい。

 冷たくて不遜な彼のままだったら、あんな男なナシだと切り捨てられていた。心を乱されるこは絶対になかったと言いきれる。
 でも、それは彼の一面にしかすぎなかった。

 ちょっとわかりづらいけれど、冬馬さんは気遣いのできる人。いきなり始まった同居生活も、おかげでストレスはほとんど感じていない。それぞれのリズムで無理なく暮らせている。

 会話は少なくても、朝だけは頻繁に顔を合わせていたからそれで十分。私はサンドウィッチを、彼はコーヒーを用意する。朝の小さなやりとりが当たり前になっていて、けれどさらに距離が近づくことはない。

 順調な契約結婚だったはず。
 それなのに……と、冬馬さんを盗み見る。

 パーティーに参加した夜に、酔った私が素を晒してしまったからか、彼の中のガードもたしかに緩んでいる。
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