結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 いずれ別れるときがくるとわかっている。

 せめて私が妻でいる間は、彼にふさわしい女性でありたいと思う。そのひとつが、コンペへの参加だ。

 もちろん、私自身が興味を持って挑戦したいと思ったのが一番。でもそれだけじゃなくて、もし私が高評価を受けられれば彼の評判を高めることにもなる。

 真面目で優秀な女性を妻にした愛妻家。目指すは、冬馬さんが周囲からそんなふうに思われること。その理想の姿に、できる限り近づきたい。
 コンペの結果は未知数だけれども、自分の持てるすべてを詰め込めた。

 そうして焦れるように日々を過ごし、ひと月後、いよいよコンペの結果が発表された。

「青山さん、がんばりましたね」

 上司である室長が、穏やかな笑みを浮かべる。
 結果は、少し前にメールで一斉に送信されてきた。私も確認済みだ。

「ありがとうございます」

 結果は、特別賞。
 もちろん大賞を狙っていたが、一歩及ばず。それが悔しいと思えるくらい、真剣にがんばってきた。

 社内を移動していると、これまでに関わりの合った同僚が祝福の声をかけてくれる。

「青山」

 企画部時代の同僚の岡本君が、私を見かけて駆け寄ってきた。

「特別賞だってな。おめでとう」

「ありがとう」

「企画書をざっと読んだけど、なかなかおもしろかった。これまでの技術も利用すれば、開発コストもかなり抑えられそうだし、現実的なところが青山らしい」

 今では企画部のエースとも言われる岡本君に認めてもらうのは、私にとってかなり自信になる。

「企画部時代に培った知識があったおかげかな」

「上も乗り気だったから、イベント用ではないけど、定番商品の新しいコンセプトとして生かされるかもしれないな」

「本当?」

 実現したら、かなりうれしい。

「まだ興味を示している段階だから、もしかしたらの話だぞ」

「もちろん、わかってる。それじゃあ」

 岡本君と別れて、秘書課に向かう。その足取りは、いつになく軽い。
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