結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 帰宅をして、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしている。

 ここところは企画書にかかりきりで、家のことはずいぶん手抜きになっていた。それどころか、多忙な冬馬さんがそのフォローに回ってくれていた状態だ。

 週末は外出を控えて、家のことをしようか。
 そんなふう考えながらリビングのソファーでぼんやりとしていたところ、玄関からカチャリと開錠の音が聞こえてきた。

 ハッとして時間を確かめると、もう二十二時を回っている。
 なんとなくそわそわしながら、冬馬さんが近づいてくる足音に耳を澄ませた。

「ただいま」

「お、おかえりなさい」

 さりげなさを装って振り返る。視線が合うと、冬馬さんはすっと目を細めて笑みを浮かべた。

「おめでとう、瑞希。おもしろい案だった」

 そういえば彼は事前に結果を知っていたはずだが、それをいっさい感じさせなかった。

「ありがとう、ございます」

 日中はたくさんの人に同じような言葉をかけられたが、冬馬さんからの褒め言葉一番うれしい。

「がんばった甲斐があったな」

 私の前で足を止めた彼は、ぽんっと頭に手を乗せた。
 ドキリと跳ねる鼓動に気づかれないよう、胸もとを手でそっと抑える。

「今度、受賞のお祝いをしよう」

「お祝い?」

「ああ」

 個人的な、ということだろうか。

「俺からの、ご褒美だ。夫としての」

「お、夫……」

 契約の関係にすぎないというのに、そんな言葉に胸が高鳴ってしまう。

 彼へ好意を寄せているのは、自分の中でもうどうにもごまかしきれなくなってしまった。
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