結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 冬馬さんが好き。

 素直にそう認めてみれば、ふっと楽になった気がする。

 でも、決して彼に悟られてはいけない。
 これまでの冬馬さんの口ぶりから、異性関係によい思いがないのだろうと察している。異性に対する煩わしさを、隠そうともしていなかったくらいだ。ここで私が気持ちを打ち明けたら、きっといい顔をしない。もしかすると、すぐに婚姻関係を解消されるかもしれない。

 離婚が必須なのはわかっているけれど、もう少し心の準備をする時間がほしい。

 でも、そうやって時間を引き延ばすほど、知らなかった彼の一面を知って離れがたくなっていくのだろう。そのジレンマが、苦しくてたまらない。

「楽しみにしています」

「ああ」

 離婚したら、前のようにおひとり様に戻るだけ。

 私は生涯ひとりで生きていくと決めて、ずっとそれを貫いてきたはずなのに。なんだか、すべてがままならない。

 別れた後は、以前のように自分の気になったものを楽しめばいい。それで、ネット上の顔も知らない誰かと交流する。

 そういうあたり前だった暮らしが、今の私にはまったく思い描けなくなってしまった。

 冬馬さんとの結婚生活を終えた後、私はどうやって生きていけばいいのだろう。
 そんな胸の痛みを無視して、切なさを隠しきれない視線でリビングを後にする冬馬さんの背中を見送った。



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