彼らの夏が終わる
「……っ、くそっ」


 何度手を伸ばしても、ボールを取れない。

 かろうじて追いつくことはできてもボールに触れることすらできなかった。


「なんで……っ」


 一輝が見た限り、藤也のドリブルは取り立てて上手には見えなかった。体育のバスケの授業の後半、ちょっと慣れてきた運動部の連中くらいだ。

 だからその程度の相手だと思って体を寄せても、するりとかわされてしまう。


「よっ……!」


 隙を見て、藤也は飛んだ。

 もともと背の高い藤也は、その高さを生かして軽々とゴールを決めた。


「藤也、1点」


 メイサが淡々と言って、スコアボードをめくる。

 勝ち誇ったり、嬉しそうにしてくれれば言い返しようもあった。だが、メイサも藤也も表情一つ変えず、一輝は唇を噛むしかなかった。

 大雅がボールを拾い、一輝に放った。


「……ちっ」


 一輝は腰を落とし、ゴールへ踏み出す。だが、その一歩目で藤也にボールを奪われた。


「は?」


 あっけに取られているうちに、藤也はもう一点、ゴールを決めた。

 スコアボードが一枚めくられ、大雅は無言で再び一輝へボールを放った。

 一輝は黙って藤也とメイサを見た。

 二人は相談などしていない。互いに視線を交わすことすらなかった。

 メイサも藤也も、真顔で一輝を見ていた。


「……なんなんだよ」


 その呟きに答える相手はいなかった。

***

 そのまま流れは変わらず、藤也が五点目を決めて勝負がついた。


「なんで」


 一輝は呆然とつぶやいた。

 一輝は小学生のころから、ずっとバスケだけを続けてきた。

 そりゃ、強豪校に入れるほどではない。それでも、素人に負けるなんてこと、あるはずがなかった。

 うつむいた一輝の視界に、ゆっくりと藤也のシューズが入り込んできた。


「……」


 一輝がのろのろと顔を上げると、藤也は静かに口を開いた。


「すごいっしょ、俺の彼女」

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