彼らの夏が終わる

Day 10.大学

 土曜日の朝。須藤(すどう)藤也(とうや)はトラックの助手席で、機嫌よくタブレットをスクロールしていた。


「藤也、午前中は部活だっけ」


 運転席では、藤也の父親・藤乃(ふじの)がハンドルを大きく切りながら声をかけた。

 藤也の実家は造園屋兼花屋で、休みの日の朝になると、藤也は花の仕入れについて行くのが習慣だった。

 目当ての花を無事に仕入え、家へ戻る道すがら、藤也は入荷した花の情報をタブレットに入力していた。


「うん。朝一は園芸部に顔出して、そのあとバスケ部」

「頑張るなあ」


 父親がやけに嬉しそうな声で言うものだから、藤也は顔を上げた。


「親父も高校同じだろ。園芸部やってたんじゃねえの?」

「俺は入ってないよ。そもそも部活を立ち上げたのは母さん……藤也の婆さんで、二人目の部員が藤也の爺さん。俺は人と話すのが嫌いだから、部活はやらなかった」

「コミュ障め……」


 藤也は肩をすくめて父親を睨んだ。


「だから、藤也がそうやっていろいろ頑張ってるのを見るのは楽しいし、嬉しいよ。別に自分のことをやり直したいとは思わないし、俺の高校生活も悪くなかった。でも、それとこれとは別だろ。メイサちゃんも一緒なんだろ? いいじゃん、青春」

「なんで知ってるんだっけ」

「こないだメイサちゃんがバイトに来たときに瑞希(みずき)と盛り上がってたよ。藤也の筋肉はどこを育てるべきかってさ」

「何してんだよ……」


 瑞希は藤也の伯父で花農家を営んでいる。筋トレが趣味だから、きっとメイサとそういう話題で盛り上がったのだろう。

 その様子を想像すると微笑ましいような、むず痒いような。

 藤也はちょっと笑って、手元のタブレットに視線を戻した。

***

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