彼らの夏が終わる
 職員室に向かう途中、海斗は大雅にこっそり話しかけた。


「赤江先輩の言う『メイちゃん』ってどんな人ですか?」

「んー、サッカー部のマネージャー。見た目は派手で、バカっぽいギャルって感じかな」

「へえ」


 藤也の好みはギャル系なのか、と海斗は一人で納得して頷いた。


「でも、部活中はめちゃくちゃ厳しいって聞いたよ。あと結構気が強いって」

「……黒杉先輩と喧嘩しませんかね?」


 目を細めた海斗に、大雅は小さく唸った。


「やむをえない」

「やむをえないですか……」


 そんな話をしているうちに、三人は職員室へとたどり着いた。

 灰田は課題の採点をしていたが、愛香の話を聞くと、「ふうん」と気のない返事をしながら頷いた。


「やってみればいいんじゃない。俺は黒杉に必要なのは立ち向かってくれる誰かだと思うよ」

「立ち向かう……?」

「うん」


 首を傾げた愛香に、灰田はにやりと笑った。


「学生のうちに喧嘩して、仲直りして、一緒に同じ目的を目指す。そういう経験はしたほうがいい。……なんて言うと説教くさいな。んー、友情、努力、勝利? 友情ってのは、仲良しこよしだけじゃない」


 職員室の時計の音が大きく響いた。

 愛香は口を閉じ、大雅はその背中をじっと見る。


「先生、ワンピース好きですか?」


 海斗が聞くと、灰田は小さく笑った。


「ハイキューとかスラダンのほうが好き。というか、スラダンが好きだからバスケ部の顧問やってるんだよ」

「その割には顔出してくれませんけど」

「出したいけど、俺今年、進路指導部と交通委員会、それにPTA対応までやっててさ。これ以上仕事が増えたら過労死するわ。悪いけど、教頭先生に進路指導部と交通委員会、それにPTA対応を外してくれって言ってきてよ。そしたら毎日、朝晩バスケ部に顔出すから」


 愛香が顔を上げると、職員室の奥では教頭が苦笑しながら両手で大きくバツを作っていた。

 灰田はがくりと肩を落とす。

 愛香は頭を下げて、大雅、海斗と共に職員室を出た。

***

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