拗らせ俺様が犬系彼氏になった理由
私があんなフラれ方をしてどれだけ辛かったか。相手の妊娠が嘘だった? だからどうしたんだ。あの時、私をこっぴどく振って相手を選んだのは浩一だ。
浩一と別れるとき、彼の両親には深く謝罪された。あの後、浩一にも厳しくしたのは容易に想像がつく。親に見放され、もしかしたら友人たちも離れていったのかもしれない。婚約中に他の女性を妊娠させ、その式場で挙式を挙げようとしたというだけでもドン引き案件なのに、結局浮気相手とも別れたなんて、見限られても仕方がない出来事だからだ。
そして一人きりになった彼は、自分を探したのか。
「……やり直すつもりなんてない」
「噓だろう! 華、綺麗になったんだな。今日会った時、はじめ分からなかったよ。俺にフラれた時に言われた言葉が悔しくて、見返してやるって思ったんだろ? それって、まだ俺に未練があるってことなんだよ。ちゃんと考えて。俺たち、五年も一緒にいたじゃん」
浩一は必死になって華に言う。その表情はかなり切羽詰まっており、彼がどれほど追い詰められているのか分かる。
でもそれは、決して『自分を愛しているから』ではないと、華はわかっていた。
「華なら分かってくれるだろ? 華は優しいし、いつでも俺の味方だったし! 今度こそ結婚しよう? そして、親や友達にも華から声を掛けてくれよ!」
本音はそれだろうな。華も朔弥も同時に思った。
華がどう答えようか迷っていると、朔弥がぐっと前に出る。そして非常に冷たい声で浩一に言う。
「何様なの? 自分がどれだけ勝手なことを言ってるか分かってる? 佐々山さんは都合のいい人形じゃないんだよ。お前に佐々山さんはもったいなさすぎる! ヨリを戻すわけないだろうが。むしろ五年も付き合えてた奇跡に感謝してろ!」
「は、はあ……? なんだお前……!」
カッとなった浩一が強く握りこぶしを作った瞬間、その場にそぐわない高い声が聞こえた。
「秋山さーん? あ、こんなとこにいたー!」
屋上の出口から美鈴がひょこっと顔を出す。浩一はぐっと出しかけた拳を引っ込め、とりあえず仕事用の笑みを浮かべる。
「はい、何でしたか」
「部長が探してましたよ?」
「ああ……そうですか。すぐに行きます」
浩一はちらりと華を見ると、仕方ないとばかりに背を向けた。浩一と美鈴はそのまま屋上を後にしていく。そんな二人の背中を、華と朔弥はじっと見つめていた。
美鈴たちが完全にいなくなった後、朔弥がくるっと華を振り返って手を合わせる。
「ごめん! なんかしゃしゃり出ちゃった……!」
華がどうしてほしいか聞いてから動こうと思ったのに、いてもたってもいられなかった。迷惑だったらどうしよう。
だが華はむしろ嬉しそうに微笑んだ。
「とんでもないです。助かりました。ありがとうございました」
「な、ならよかった」
「ほんと今更、何を言ってるんでしょうね。まさかヨリを戻したい、なんて……」
そこまで言った華は、すっと立ち上がる。そして朔弥と正面から向き合うと、しっかりとした声で言った。
「私、ここでもっと働きたいです。辞めるつもりだったけど、今はそんなことない。浩一のせいで退職するなんて、嫌なんです」
「……そっか」
朔弥は優しく微笑む。
「深見さんは十分いろいろしてくれてて、ありがたいです。一つだけお願いしたいとすれば、その……わた、私の味方でいてください」
少し耳を赤くして華が言った。図々しい言い方だと自覚していたが、それが自分の素直な気持ちだった。
事情を全て知っている朔弥には、どうか自分を信じていてほしい。
彼しか、本当の味方はいないと思っているから。
華の言葉を聞いて、朔弥は勢いよく自分の胸を抑える。まるで銃で撃たれた時のように。
(殺し文句で心臓を射抜かれたんだが!!!)
味方でいてくださいなんて。こんなセリフ、ときめかないわけがない。現実でこんなことを言われる日が来るなんて思いっていなかった。
「当然だから!!!!」
無駄に大きな声で朔弥が叫んだため、華は少しだけ笑った。
浩一と別れるとき、彼の両親には深く謝罪された。あの後、浩一にも厳しくしたのは容易に想像がつく。親に見放され、もしかしたら友人たちも離れていったのかもしれない。婚約中に他の女性を妊娠させ、その式場で挙式を挙げようとしたというだけでもドン引き案件なのに、結局浮気相手とも別れたなんて、見限られても仕方がない出来事だからだ。
そして一人きりになった彼は、自分を探したのか。
「……やり直すつもりなんてない」
「噓だろう! 華、綺麗になったんだな。今日会った時、はじめ分からなかったよ。俺にフラれた時に言われた言葉が悔しくて、見返してやるって思ったんだろ? それって、まだ俺に未練があるってことなんだよ。ちゃんと考えて。俺たち、五年も一緒にいたじゃん」
浩一は必死になって華に言う。その表情はかなり切羽詰まっており、彼がどれほど追い詰められているのか分かる。
でもそれは、決して『自分を愛しているから』ではないと、華はわかっていた。
「華なら分かってくれるだろ? 華は優しいし、いつでも俺の味方だったし! 今度こそ結婚しよう? そして、親や友達にも華から声を掛けてくれよ!」
本音はそれだろうな。華も朔弥も同時に思った。
華がどう答えようか迷っていると、朔弥がぐっと前に出る。そして非常に冷たい声で浩一に言う。
「何様なの? 自分がどれだけ勝手なことを言ってるか分かってる? 佐々山さんは都合のいい人形じゃないんだよ。お前に佐々山さんはもったいなさすぎる! ヨリを戻すわけないだろうが。むしろ五年も付き合えてた奇跡に感謝してろ!」
「は、はあ……? なんだお前……!」
カッとなった浩一が強く握りこぶしを作った瞬間、その場にそぐわない高い声が聞こえた。
「秋山さーん? あ、こんなとこにいたー!」
屋上の出口から美鈴がひょこっと顔を出す。浩一はぐっと出しかけた拳を引っ込め、とりあえず仕事用の笑みを浮かべる。
「はい、何でしたか」
「部長が探してましたよ?」
「ああ……そうですか。すぐに行きます」
浩一はちらりと華を見ると、仕方ないとばかりに背を向けた。浩一と美鈴はそのまま屋上を後にしていく。そんな二人の背中を、華と朔弥はじっと見つめていた。
美鈴たちが完全にいなくなった後、朔弥がくるっと華を振り返って手を合わせる。
「ごめん! なんかしゃしゃり出ちゃった……!」
華がどうしてほしいか聞いてから動こうと思ったのに、いてもたってもいられなかった。迷惑だったらどうしよう。
だが華はむしろ嬉しそうに微笑んだ。
「とんでもないです。助かりました。ありがとうございました」
「な、ならよかった」
「ほんと今更、何を言ってるんでしょうね。まさかヨリを戻したい、なんて……」
そこまで言った華は、すっと立ち上がる。そして朔弥と正面から向き合うと、しっかりとした声で言った。
「私、ここでもっと働きたいです。辞めるつもりだったけど、今はそんなことない。浩一のせいで退職するなんて、嫌なんです」
「……そっか」
朔弥は優しく微笑む。
「深見さんは十分いろいろしてくれてて、ありがたいです。一つだけお願いしたいとすれば、その……わた、私の味方でいてください」
少し耳を赤くして華が言った。図々しい言い方だと自覚していたが、それが自分の素直な気持ちだった。
事情を全て知っている朔弥には、どうか自分を信じていてほしい。
彼しか、本当の味方はいないと思っているから。
華の言葉を聞いて、朔弥は勢いよく自分の胸を抑える。まるで銃で撃たれた時のように。
(殺し文句で心臓を射抜かれたんだが!!!)
味方でいてくださいなんて。こんなセリフ、ときめかないわけがない。現実でこんなことを言われる日が来るなんて思いっていなかった。
「当然だから!!!!」
無駄に大きな声で朔弥が叫んだため、華は少しだけ笑った。