拗らせ俺様が犬系彼氏になった理由
朔弥の方を向いてはっきりという。彼は無言で華の顔を見ていた。何も返せず、だた呆然としたように。
華は布巾を置いて朔弥の方を向いた。
「深見さんはいつの間にか凄く人気者になっちゃって、なんだか遠い人のように感じることもあるけど、あなたと時々食べる昼食の時間が好きです。深見さんのおかげで外見も少し変われて、みんなに似合うよって言われて嬉しかった。今なら、前を向いてやり直せそうだと思うんです」
ほんの少しの変化。それでも大きな変化。
華にとって、職場は以前と全く違う場所に思えていいた。
「それは……俺の方で……」
朔弥が小さく呟く。
「馬鹿だった俺をちゃんと注意してくれて、俺こそ楽しくなったよ。今まで周りに避けられてたのに、今は普通に話せてて……ていうか、俺が人気者って。言っておくけど、佐々山さんこそ一気に注目を浴びてハラハラしてるのはこっちだよ」
やや不満げに眉を下げたので、華は首を傾げた。
「私?」
「凄く可愛くなって。なんか男たちもこぞって佐々山さんを『可愛い可愛い』って言って。俺の方がずっと前から知ってたんだけど」
朔弥がすっと華から視線を逸らしてむっとした顔を隠すように手で口元を覆った。その仕草が華にはとても愛おしく思え、ぐっと熱い何かがこみ上げてくる。
……可愛い、なんて思ったら、失礼なのかな……。
でも、そう思ってしまった。
「……私、メイク似合うよってみんなに言われて嬉しかったんですが……」
華はどこか小さな声で、でもはっきりと続ける。
「深見さんに『可愛い』って思ってもらえたら、それで十分なんです」
華の言葉を聞いて、朔弥が目を丸くして顔を上げる。
華が優しく微笑んで朔弥を見ていた。その口元は淡い桜色をしていて、朔弥が贈ったリップだと分かった。
それに引き寄せられるように華にそっと手を伸ばす。ほぼ無意識だった。触れようと思ったわけではない、ただ触れたいと思った。
少しひんやりした華の頬に指が触れる。華は逃げず、そのまま動かなかった。じっと朔弥の目を見つめ返す。
自然な流れで顔を寄せると、華がゆっくり目を閉じたのが見えた。それを合図とするかのように、朔弥は桜色の唇に口づけた。
静かな部屋で、暖房の音が微かにしているだけだった。
華の唇はリップで濡れていて、逆に朔弥は冬の空気のせいでほんの少し乾燥していた。でもなぜか華にとっては、それがとても愛しく思えた。優しくて、でも愛情が伝わる、彼らしいキスだと思えた。
しばらく経った後、ゆっくり朔弥が顔を離すと、華の潤んだ目が見えた。綺麗に伸ばされた睫毛が揺れている。その瞳に自分の顔が映っていた。
「……あ」
華の口から小さな吐息が漏れた瞬間、朔弥は一気に現実に引き戻された。まだ触れたままだった華の頬からさっと手を引く。
(え……あれ? 俺、今……)
ちょい待て。
何したんだ俺は今??????
完全に固まる。
一方華は恥ずかしそうに顔を俯かせた。ほんのり頬が赤くなっている。一体どう切り出そうか、と華が悩んでいると、朔弥が変な声を上げた。
「うわあああ!」
「きゃっ。な、なんですか?」
「お、俺今なんてことを!!」
佐々山さんから告白の返事を聞いてないのに、そして紳士度を試されているのに、手を出してしまった。こんなの犯罪者だろ!!
朔弥の顔が一気に青ざめる。だが華はきょとんとして朔弥を心配した。
「深見さん? どうし……」
「ほんとごめん! 謝っても謝りきれない! ほんと最低だ!」
「え、いや、あの……」
「マジで何した?? うわ俺多重人格者なの? いや記憶はあるけど、ほんとそんなつもりはなくて」
「深見さん、落ち着いて」
「俺とキス出来たことを光栄に思えよ!!」
(混乱でまた変な発言してる……)
華は布巾を置いて朔弥の方を向いた。
「深見さんはいつの間にか凄く人気者になっちゃって、なんだか遠い人のように感じることもあるけど、あなたと時々食べる昼食の時間が好きです。深見さんのおかげで外見も少し変われて、みんなに似合うよって言われて嬉しかった。今なら、前を向いてやり直せそうだと思うんです」
ほんの少しの変化。それでも大きな変化。
華にとって、職場は以前と全く違う場所に思えていいた。
「それは……俺の方で……」
朔弥が小さく呟く。
「馬鹿だった俺をちゃんと注意してくれて、俺こそ楽しくなったよ。今まで周りに避けられてたのに、今は普通に話せてて……ていうか、俺が人気者って。言っておくけど、佐々山さんこそ一気に注目を浴びてハラハラしてるのはこっちだよ」
やや不満げに眉を下げたので、華は首を傾げた。
「私?」
「凄く可愛くなって。なんか男たちもこぞって佐々山さんを『可愛い可愛い』って言って。俺の方がずっと前から知ってたんだけど」
朔弥がすっと華から視線を逸らしてむっとした顔を隠すように手で口元を覆った。その仕草が華にはとても愛おしく思え、ぐっと熱い何かがこみ上げてくる。
……可愛い、なんて思ったら、失礼なのかな……。
でも、そう思ってしまった。
「……私、メイク似合うよってみんなに言われて嬉しかったんですが……」
華はどこか小さな声で、でもはっきりと続ける。
「深見さんに『可愛い』って思ってもらえたら、それで十分なんです」
華の言葉を聞いて、朔弥が目を丸くして顔を上げる。
華が優しく微笑んで朔弥を見ていた。その口元は淡い桜色をしていて、朔弥が贈ったリップだと分かった。
それに引き寄せられるように華にそっと手を伸ばす。ほぼ無意識だった。触れようと思ったわけではない、ただ触れたいと思った。
少しひんやりした華の頬に指が触れる。華は逃げず、そのまま動かなかった。じっと朔弥の目を見つめ返す。
自然な流れで顔を寄せると、華がゆっくり目を閉じたのが見えた。それを合図とするかのように、朔弥は桜色の唇に口づけた。
静かな部屋で、暖房の音が微かにしているだけだった。
華の唇はリップで濡れていて、逆に朔弥は冬の空気のせいでほんの少し乾燥していた。でもなぜか華にとっては、それがとても愛しく思えた。優しくて、でも愛情が伝わる、彼らしいキスだと思えた。
しばらく経った後、ゆっくり朔弥が顔を離すと、華の潤んだ目が見えた。綺麗に伸ばされた睫毛が揺れている。その瞳に自分の顔が映っていた。
「……あ」
華の口から小さな吐息が漏れた瞬間、朔弥は一気に現実に引き戻された。まだ触れたままだった華の頬からさっと手を引く。
(え……あれ? 俺、今……)
ちょい待て。
何したんだ俺は今??????
完全に固まる。
一方華は恥ずかしそうに顔を俯かせた。ほんのり頬が赤くなっている。一体どう切り出そうか、と華が悩んでいると、朔弥が変な声を上げた。
「うわあああ!」
「きゃっ。な、なんですか?」
「お、俺今なんてことを!!」
佐々山さんから告白の返事を聞いてないのに、そして紳士度を試されているのに、手を出してしまった。こんなの犯罪者だろ!!
朔弥の顔が一気に青ざめる。だが華はきょとんとして朔弥を心配した。
「深見さん? どうし……」
「ほんとごめん! 謝っても謝りきれない! ほんと最低だ!」
「え、いや、あの……」
「マジで何した?? うわ俺多重人格者なの? いや記憶はあるけど、ほんとそんなつもりはなくて」
「深見さん、落ち着いて」
「俺とキス出来たことを光栄に思えよ!!」
(混乱でまた変な発言してる……)