悪魔は夜に笑う
「はあー、さっぱりした。さあ準備しよ」


あえて大きな独り言を呟きながら部屋に戻った。
変な行動をすれば蒼士郎くんにツッコミを入れてもらえると思ったからだ。
甘ったるい雰囲気が抜けなくてどうも仕事モードに切り替えられない。
さあ蒼士郎くん、ぴしゃりと冷徹なツッコミをしておくれ。

しかし蒼士郎くんはそんな私を無言で眺めて、座っていたソファから腰を上げる。
そして背後から近づいてくると抱きしめてきた。


「ねえあゆなさん、返事は?」


なんでやん。どうも息が合わない。
私は甘いひと時なんて希望してませんが?

そもそも、ふざけようとする私の対応が間違いか。
誠実に向き合わなきゃいけないのは分かっているのに逃げようとしてしまうのはなんでだろう。

蒼士郎くんの腕の中で考えを巡らせていると、不意に頬に手を伸ばされて顔の向きを変えられ、肩越しに蒼士郎くんと目が合った。
やばいキスする気だ。私は咄嗟に口を開いた。


「あの、私のほかに片思いしてる人がいる?」

「は?」

「実は忘れられない元カノがいる?」

「何?アキネーター?」

「うわ懐かしい!昔流行ったよねあれ」

「さっきから誰の話してるんですか」

「す、すみません……」


どうにか蒼士郎くんの意識を私以外に付けようとしたら怒られた。
さすがにしつこく探りすぎだ。この話題もさすがの蒼士郎くんもうんざりだろう。
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