悪魔は夜に笑う
「もし少しでも心残りがある子がいるなら言って欲しい。ほら、私を利用すればどんな恋愛も成就させちゃうから」


何がここまで不安なのか。
それは私のこれまでの苦い経験と、蒼士郎くんの日々の生活を鑑みると必ず見えてくるものがある。
蒼士郎くんには常に女の影が付きまとう。それが私にとって大きな障害だと。

どれだけ愛を囁かれても不安が拭えない。
ああダメだ。朝からナイーブな心境に陥りそう。


「言霊って知ってます?」


うつむく私の耳元で蒼士郎くんは一言。
私は驚いて首をひねった。


「蒼士郎くんの口からスピ発言が出てきてびっくり」

「いいから聞いてよ」


おちょくるような発言をすると眉間にしわを寄せる。
また怒らせてしまったと慌てたけど、蒼士郎くんは決して抱きしめる腕の力を抜かない。


「そんなこと言うから恋愛できないんですよ。どうせ私なんてうまくいかないって、自信のなさが表に出てる」


恋愛に対する自信なんて10代で折れてしまったのだから仕方ない。
神がかって他人の縁を結んでしまうなんて嘘みたいな話、誰も信じてくれないし。


「そうやっていつも遠慮してたんでしょ。前も言ったけどもっとわがままでいいのに」


蒼士郎くんはことある事にわがままでいろ、なんて私には難解な言葉を投げかけてくる。
世の中の男の大半が望むのは、蒼士郎くんの元カノたちみたいな愛らしい女だと私は思う。

素直で可愛くて守りたくなる存在。
その枠から大きく外れている自覚はあるのに、どうして蒼士郎くんは私の心を欲しがるのだろう。


「俺のこと信じてよ」
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