悪魔は夜に笑う
蒼士郎くんは私の肩に頭を預け、絞り出すような声で懇願する。
分かってる。蒼士郎くんに揺らいでるってこと。
あとは自分の問題だから、どこかで踏ん切りをつけなきゃいけないってことも。


「もう少し、時間をください……」

「いいよ、待つって言ったし」


小さな声で返答を返すと、蒼士郎くんは案外ケロッとした声音で、私の体を拘束していた腕を解いた。
そして正面に回ると、私の表情をじっくり眺めて片方の口端を上げる。


「ほぼ俺のこと好きでしょ?」


確信めいた問いかけに、この状況すら楽しんでいるのかとある意味感心した。
もし私が男だったら、こんな優柔不断なウジウジした女嫌だけどそれでも彼は数多の選択肢から私を選出した。
変わってる、といえばそれで済むけど果たして私を選んで後悔しない?


「今度会った時、あゆなさんから返事聞かせて」


わだかまる疑問を爽やかな笑みに吹き飛ばされた。
この時私は、人生を大きく左右する局面に立たされていることに気がついた。

哀れなキューピットの今後を、よりによってこの悪魔に委ねる覚悟は正直まだできていない。
それでも重苦しい湿った感情が消え失せて、心が少し軽くなった気がした。
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