悪魔は夜に笑う
「あの日、あゆなさんから今日家にいるって聞かれたから来る気だと思って。
待ってたらインターホンが鳴って、やっぱりあゆなさんだって開けたら元カノがいて、ヨリ戻したいって言われた」


やっぱりあの日、私が行こうとしてることは蒼士郎くんにバレてた。
待ち構えていたところにまさかの来訪者。
そこに出くわすなんて信じられないけど、私の引きの強さならありえないことはない。

それに、元カノの連絡先は消していると聞いていた。
だから一か八か蒼士郎くんの自宅に突撃したってところだろう。


「好きな人がいるからごめんって断ったら、じゃあ最後に抱きしめさせてって言われて、おそらくその場面にあゆなさんが出くわした感じ」


なるほど。私は最悪のタイミングであの場で鉢合わせたようだ。
あと数分時間が前後にずれていれば何も問題はなかったのに。


「その後あゆなさん待ってたけど全然来なくて。まさかと思ったら連絡先全部ブロックされてたからマジで血の気が引いた」


血の気が引く、と言った蒼士郎くんは手を繋いだまましゃがんで大きくため息をつく。
気が抜けたようだった。


「頼むから逃げないでちゃんと向き合って。この2週間地獄だった」

「……ごめん」

「俺の反省点としては元カノの要求を飲んでしまったこと。さっさと帰せばよかった」


向き合うことが怖くて逃げた私も反省するべきだ。
しゃがんで目線を合わせると、蒼士郎くんは上目遣いで首を傾げた。
愛らしい仕草を直球で受け、蒼士郎くん耐性をすっかり失っていた私の心臓はドコドコとお祭り騒ぎ。

そうだった、この男は気が抜けた表情こそ警戒するべきだった。
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