悪魔は夜に笑う
第9話
蒼士郎くんと付き合うことになった。
と言っても関係性は付き合う前と特に変わらず、地に足が着かないふわふわとした実感のまま1週間が過ぎた。


「マスター、これ皆さんでどうぞ」


私は開店直後にバーに出向き、頭を深々と下げた状態で菓子折りを差し出した。


「ありがとうございます。これ璃世が好きなんですよ。でもどうしたんですか急に」

「えっと、その節はご迷惑おかけしました」


だってマスターを痴話喧嘩に巻き込んでしまったようなものだから。
蒼士郎くんから聞いたけど、私と連絡が取れなくなったことをマスターに相談していたらしい。
色恋沙汰のサポートまでさせてしまったなんて、多大な迷惑をおかけしたことに違いない。


「ああ、なるほど。お気になさらず。僕としては蒼士郎くんが元気になってよかったです。
一時期元気がないからどうしたものかと思ってたんです」


しかしマスターは菩薩のような微笑みで蒼士郎くんを案じている。
菓子折りを受け取ったマスターは、なぜか私に頭を下げてきた。


「誤解されがちなですが彼はとても優しくて思いやりのある子なんです。どうかよろしくお願いします」


マスターから蒼士郎くんをよろしくお願いしますなんて言われるとは思ってなかった。
やはり彼は父性の塊というか、蒼士郎くんを家族のように想っているんだ。
なんだか感動して同じく深く頭を下げた。


「なぜふたりしてお辞儀を……?」


すると、カウンターから赤嶺くんの声がした。
顔を上げると神妙な面持ちの赤嶺くんが。
目力が強いから真顔だと怖いな。
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