悪魔は夜に笑う
マスターは菓子折の箱を持ってバックヤードへ。
平日の開店直後だからまだお客さんは来ないと思って先に事務作業をする感じかな。

私もまだ飲む気になれなくて従業員の観察をしていると、赤嶺くんはカウンターで作業をしている蒼士郎くんの横に立ち、突然マッスルポーズを決めた。
何やってんのこの人。
ツッコミたかったけど蒼士郎くんはガン無視で手元を見ている。

構ってやりなさいよ。これだから東京の人は冷たいって言われるんだよ。


「蒼士郎、戦士になる気はないか」

「ありません」

「ベストボディジャパンの大会に出る気は無いか?」


すると、なにやら初めて聞く用語が聞こえた。
蒼士郎くんをボディビルの大会へお誘いしているらしい。

「ないって言ったでしょ」

「もったいない。手足が長くて広い背中……筋肉が映そうな肉体をしているのに」

「俺にとって筋トレはストレス発散の趣味程度がいいんです」

「なるほど」


確かに蒼士郎くんは綺麗な体をしている。
手足が長くてバランスのいい体格で姿勢もいい。
ボディビル界隈の人から見れば蒼士郎くんは見栄えがいいのだろう。

そんなことを考察していると、下を向いていた蒼士郎くんが顔を上げて私の目を見た。
え、なんで私の方見たの?
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