悪魔は夜に笑う
「さあ、俺も分からない」


心臓バクバクになりながら聞いたのに帰ってきた答えはあっけなかった。
引き止めるならもっと女の気を引く発言を頑張って考えなさいよ。

なんで行き当たりばったりな行動するの。
蒼士郎くんって考えてることたまに分からないんだよね。
仕方ない、若気の至りってことで処理しておこう。


「じゃあなかったことにしよう、私も忘れるから、蒼士郎くんも今まで通り接してね」

「切り替え早っ」

「私には時間が無いの、セフレなんてもってのほかだから」

「相性いいのに?」

「うるさい、黙って」


こういう時に感情的になって相手を問い詰めたら負けだと知ってる。
何度もこういう苦い思いを経験してきたから。


「俺、色恋とかしないよ」


それなのに食い下がってくる蒼士郎くんはなんなんだ。
常連客ひとり失うのがそんなに怖い?
安心してよ、なかったことにするから私は今後も通い続ける。


「知ってるよ蒼士郎くんめんどくさがりじゃん」


私なんかに執着しなくても女はごまんといるだろう。
しかも自分からアプローチしなくてもだいたい女の方から告白してくるみたいだし。
それをバッサリ断るから何人の女を泣かせてきたことか。

マスターも「もう少し断り方を考えて欲しい。あれじゃいつか刺されるかも」と頭を悩ませてたし。
当の本人は後腐れさせないためにもキッパリ断らないとダメなんですよって開き直ってた。

一旦蒼士郎くんのことを考えるのはよそう。
カバンから財布を取り出して万札をテーブルに置いた。


「とりあえず私一旦帰るから」

「あゆなさんがあっさりし過ぎてさみしい」

「はいはい、じゃあまた夜ね」


さみしいという発言に後ろ髪を引かれるが、これ以上蒼士郎くんに毒されたくない。
振り払って小走りにホテルを出た。
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