悪魔は夜に笑う
「あゆなさん、何飲みます?」


蒼士郎くんはいつも通りの何食わぬ顔でドリンクの催促をする。
私はそれどころじゃなくて少し身を乗り出した。


「蒼士郎くん、付き合ってるって公表してもいいの?」


蒼士郎くんって彼女いるとか公表しないタイプと思ってた。
まあ今回はマスター巻き込んだから職場に知られてしまう結果になったけど赤嶺くんにも言っちゃうなんて。
付き合っても黒田蒼士郎という男の人となりがまだ掴めない。


「だって結婚するんでしょ」

「け、結婚……」


ほら、斜め上の発言で私を動揺させる。
いまさらだけどロマンス詐欺とかじゃないよね?
いや、蒼士郎くんだって飲み歩いてる私にお金がないことは知ってるはず。


「ふは、おもしろい顔」


まともな恋愛をしてこなかった私からしたら結婚なんて夢のまた夢のような話。
現実味がなくて大袈裟に驚いているとどこからともなくスマホを取り出し、私の顔を堂々と撮影した。


「だからなんで撮るん!」

「撮ってくださいって言わんばかりの変顔だったよ」

「人の驚いた顔を変顔呼ばわりするとか性格悪くない?」

「はいはい、これ飲んで気分落ち着かせてください」


仕事の時はいつもこう。雑な扱いにムキになるけどいつの間にか作ってくれたカクテルに夢中になって怒りを忘れる。

まったくずるい男だ。私はため息混じりにカクテルに口をつける。
どんな状況でも彼の作ったカクテルは美味しくて、目を輝かせて美味しと伝えると蒼士郎くんは「単純だね」って笑った。
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