悪魔は夜に笑う
「あゆなさん、昨日の同棲の話だけどいつ物件見に行く?」


映画館が入ってる商業施設に着くと、蒼士郎くんは思い出したように尋ねてきた。
同棲に彼氏の方が乗り気って珍しいな。


「うーん、年内に引っ越すならそろそろ見に行った方がいいかな」

「うん、年明けると引越し料金ぼったくりレベルに上がるからね」

「でも蒼士郎くん、同棲したら駐車場無料じゃなくなっちゃうよ」

「いいよ、その分稼いでるから」


デメリットも考えた方がいいのではと思ったけど一蹴された。
そうだよね、売れっ子バーテンダーだし。
今度雑誌の取材もあるとか言ってたっけ。
これ以上人気が出ると気軽に行けなくなっちゃうから寂しいけど商売繁盛のためなら仕方ない。


「かっけー!言ってみたいそのセリフ」


いろんな不安は渦巻くけど、ここはひとまずふざけておくか。
するとなぜか蒼士郎くんは神妙な顔をした。


「あゆなさんってノリがたまに男だよね」

「おしとやかとは対極にいるから」


そうか。蒼士郎くんの歴代彼女はこんなリアクションはしなさそうだからびっくりしたんだ。
でも私と蒼士郎くんは5年の付き合いだからいまさらぶりっ子とかできないし。


「でもそのままでいて。俺の好みとか考えなくていいから」


迷いが顔に出ていただろうか。
蒼士郎くんはわずかに微笑んで私の手を握るとそう言った。
急に態度を変えるのはやめてほしい。心を鷲掴みにされたら映画どころじゃなくなっちゃうから。
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