悪魔は夜に笑う
ときめきに気分が高揚していたけど、映画を見終わった頃には精神が安定していた。
それどころか感極まり過ぎてびっくりするくらい泣いた。
映画を見終わってカフェに着いてもまだ鼻の頭が赤いくらい。


「めっちゃ良かった。蒼士郎くんのセンスに感謝」

「あゆなさん感受性強すぎでしょ」

「え?まさかあの映画で一滴も涙こぼしてない?嘘やろ、さすが悪魔」


今回の映画は蒼士郎くんが観たいと言っていた洋画だった。
私は事前情報なしに鑑賞したからその分衝撃も感動も大きかった。


「泣きそうにはなったよ。でも横であゆなさん号泣だから涙ひっこんだ」

「蒼士郎くんが泣いてるとこ想像できない」

「一緒にいたらいつか見れるんじゃない?」


感性豊かでやかましくてすみませんね、なんてら思ってたら蒼士郎くんは机に肘をついて頬杖をする。
なにその気の抜けた表情。すっかり私に気を許しちゃって。


「確かに最近までは、蒼士郎くんは邪悪な笑い方しかできないんだって思ってたから、それ以外の表情はこれからちょっとずつ知っていけばいいかな」


いじって表情を変えさせるつもりが、蒼士郎くんは笑みを深めたから驚いた。
私の今の発言のどこに喜ぶ要素が?


「あゆなさんから初めて未来に関する前向きな言葉聞けたから嬉しい」

「……そうだっけ」

「そうだよ、あゆなさん俺のこと全然信用してくれないから」


確かに付き合うまで疑ってたから未来なんて想像もできなかった。
さぞもどかしかったことだろう。本気で好きなのに疑われてばかりで。


「ごめんね」


ちゃんと顔を見て甘やると、蒼士郎くんはなぜか片手で顔を覆った。


「なにそのリアクション」

「だから急にしおらしくなるのやめて」


ふーん、蒼士郎くんの弱点見っけ。
悪魔の懐柔方法を発見し大きくニヤリと笑うと、不意に顔を上げた蒼士郎くんになんで変顔してんのって言われた。
ただ笑っただけですけど、と拗ねると蒼士郎くんは楽しそうに笑った。
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