悪魔は夜に笑う
「初めまして、北島拓真と申します」

その後席に案内され、蒼士郎くんと並んで座ると対面して座る彼は北島と名乗り名刺をくれた。


「ありがとうございます……北島?」

「拓真は良いヤツだよ、安心して」


北島という名字に首を傾げると蒼士郎くんはすかさずフォロー。
北島って……私をバーです口説いてきたあの最低不倫野郎か!
確か弟と友達だからそいつのこと知ってるって言ってた気がするけど、ヤツの弟にここで出会うことになるとは。
あの出来事がもう遠い昔のように感じる。


「えー、今回はおふたりで住まわれる物件をお探しということで間違いないでしょうか?」


北島弟くんは動揺のせいか少しぎこちない。
単身で引っ越すと思ったのにいきなり彼女連れてこられたら驚くよね。
しかも女性関係に不真面目そうな蒼士郎くんが連れてくるんだからよっぽどだ。


「今後結婚して家族が増えることも前提で2LDKは欲しいかな」

「えっ、ちょマジ?……うぅん!」


さらに蒼士郎くんが結婚なんていうもんだから思いっきり2度見した後に咳払い。
蒼士郎くんはここに来てからほとんど口角が上がっていて本当に楽しそう。


「拓真相変わらずおもしろいね」

「ちょっと黙ってろ。さもないと高校のメンツに全員言いふらすからな」

「いいよ別に」

「いいんだ……」


蒼士郎くんのペースに乗せられて仕事どころじゃなさそう。
なんとか冷静を保とうとしていた北島弟くんだけど、口外してもいいと言われて愕然としていた。
たぶん、これまでの蒼士郎くんにはありえないことが起きてるんだろう。
恋人の存在明るみに出すタイプじゃないし。

今の蒼士郎くんは浮かれてるって表現が正しいかもしれない。
何考えてるか分からない男だけど、目に見えて分かる楽しいって感情は嘘じゃないかな。
< 151 / 181 >

この作品をシェア

pagetop