悪魔は夜に笑う
蒼士郎くんと行く物件巡りは案外楽しかった。
これまで先の見えない恋ばかりだったから、明るい未来が待ってるとこんなに心が軽くなるんだって実感した。
今日は2件見て回った。ただ、この内のひとつに蒼士郎くんと住むとなると全然実感が湧かない。
いつになったら私は蒼士郎くんの彼女として箔が付くようになるのだろう。


「うーん、築年数が新しい方がいいかな」


電車の中、物件を吟味しながら同時進行にそう考えていた。


「こっちにするとあゆなさん職場まで遠くなるけど大丈夫?」


蒼士郎くんはもはや私と住めたらどこでもいいみたいで、決定権は私に委ねられた。
オンボロアパートに5年住んでる男だからこだわりはないんだろうなと思ったけど。


「大丈夫。近いと呼び出し食らうし飲みに連れ回されるから遠い方が」

「あゆなさん連れて歩くの楽しいから仕方ない」

「そうなの?」

「少なくとも俺はそう思ってる」


真剣に選考していたのに、突然のときめきで動悸が止まらない。
蒼士郎くんが私にしおらしくなるのやめてっていう気持ちが分かった。
急に素直になると構えてないから致死量のときめきを食らうんだ。


「変な顔で胸押さえてどうした?」

「ときめきを抑えてんねん」

「単純でかわいいね」


バカにしたようなかわいいでも、愛しさが全面に出ているから文句が言えない。
一刻も早くこの胸の高鳴りに慣れなければ。そうは思えど一生翻弄されるような気がした。
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