悪魔は夜に笑う
「じゃあ明日デートしよう」

「何デート?」

「美術館デート。芸術の秋だから」


蒼士郎くんにしては珍しくヘロヘロだからゆっくりしたいだろうと思ったけどデートしてくれるらしい。
しかも美術館か。興味なさそうなのに意外だった。
だけど想像はできる。真剣な眼差しでアート鑑賞をする蒼士郎くんの横顔はさぞ美しいのだろうと。


「私の感性の豊かさを試す時が来たようだ」


楽しみになってきてニヤリと笑う。
だけどノリ気で食いついたのにはいはいって軽くあしらわれた。


「タクシー呼ぶ?」


蒼士郎くんは早く帰りたいかな。
だけど私は珍しく歩きたい気分。ここからだと歩いて30分くらいで家に着くし、散歩にはちょうどいいんだよね。


「歩きたい気分だけど蒼士郎くん疲れてるよね」

「いいよ、あゆなさんの健康のために歩こう」


ダメ元で言ってみたら一緒に歩いてくれるらしい。
蒼士郎くんも明日休みだから気持ちに余裕があるのかも。


「俺が紹介したピラティスちゃんと続いてる?」


歩きながら蒼士郎くんは目線だけこっちに寄越す。
疲れてる時の蒼士郎くんってセクシーだな。
新発見に心臓はお祭り騒ぎ。落ち着かせるために声を発してみた。


「週2で行ってる。偉いでしょ」

「成果が出たら褒め称えるよ」


華やぐ心は、突然蒼士郎くんに腹の肉をつままれたことで消失した。
疲れてるのにそういうちょっかいかける元気は残ってるんだ。
気の抜けた顔で目を細めると、初めて見る顔だって喜ばれた。
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