悪魔は夜に笑う
「うんざりするくらいみんな俺の顔とか家柄しか見てなくて、この人は違うかもって期待しても結局同じで、いつの間にか誰にも期待しなくなった」

「家柄?」


思いっきり容姿が良いのは見れば分かるけど、家柄の話は聞いたことがない。
語尾に疑問を残すと蒼士郎くんはゆっくり頷いた。


「俺の家、親族含めほとんど医療関係者で。
父親と兄貴ふたりも医者だから、俺も漠然と医者になるんだろうなって思ってた」

「はぁぁ、なるほど」


話の筋は分かった。私は大袈裟に相槌を打った。
医者家系でイケメンとくれば、勝手に期待されて完璧を求められて、理想の押しつけにうんざりしていた事だろう。
異性の羨望の眼差しに辟易しただろうし、同性からの僻みもあるだろうし、そりゃひねくれるわ。


「医学部に行ったけど、これって自分のやりたい生き方じゃないなってふと思った。気づいたら大学行かなくなって中退してた」

「そうだったんだ……」

「そんな時マスターと出会って、悩みを打ち明けたら全員一緒くたにしてつまらないと思うなら、見える世界を広げたらいいって言われて」


やさぐれていた蒼士郎くんにとって、マスターの言葉は心に響いたに違いない。
誰だって自分が一番大事だから、俯瞰して考えることが難しい。
マスターはそれができる上に、相談相手の欲している答えを言語化することができる。
私自身、何度マスターに救われたことか。
< 159 / 181 >

この作品をシェア

pagetop