悪魔は夜に笑う
璃世ちゃんはカルピスソーダを飲み切ると「結婚式には呼んでねー」なんてかわいくウインクしながら去っていった。
マスターが駅まで送るらしく、しばらく蒼士郎くんとお店にふたりきりに。


「はあ、疲れた」


璃世ちゃんが見えなくなると、渋い顔で歯に衣着せず言い放った。
やっぱり小悪魔璃世ちゃんの相手は蒼士郎くんには不向きかも。
でも、しょっちゅう喧嘩するけど仲良い兄妹みたいな感じでふたりとも素でいられるのは確かかも。


「カルピスに何入れたの?」


しかし、璃世ちゃんのおいしい、の顔はとてもかわいかった。思い出して問いかけると蒼士郎くんは作業台に視線を落とし、そして私に見えるように両手を高く持ち上げた。


「練乳とレモン果汁。甘いものに目のないあの年頃にはハマる」


その手には確かに練乳とレモン果汁が。
なるほど、練乳だけだと甘ったるいけどレモン汁を入れたら飲みやすそう。


「分かるー、私も10代は甘いお酒ばっかり飲んでた」

「え、想像できない。ここに来たときはもう強い酒で、が口癖だったのに」


共感したら何言ってんだって顔された。
そうか、蒼士郎くんに出会った頃はカルーアミルクで酔うようなかわいさなんて全然なかったな。


「社会に揉まれると甘さより刺激を求めるようになるからね」

「社会ってより失恋でやけ酒してる印象」

「そうですとも!ぶっちゃけ仕事のミスよりそっちがしんどかった!蒼士郎くんは私にやけ酒させないでね」


カウンターに大袈裟に突っ伏すと、蒼士郎くんは特にフォローすることなく店内の音楽をかける。
え、まさかのノーコメント?
顔を上げると蒼士郎くんは音響機材を触る手を止めて妖しげに笑った。
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