悪魔は夜に笑う
店内は1時間 もすれば満席になっていた。
マスターはテーブル席のお客さんに呼ばれてあちこち引っ張りだこ。

蒼士郎くんはカウンターの向こうで真剣にカクテルを作っている。
今日はバイトの子がいるから裏方作業を任せられて昨日より楽そうだ。

いつもと変わらない光景のはずなのに居心地が悪い。
あーあ、一線超えなければいい関係だったのに。
もう帰ろう。マスターには会えたし。

お会計を頼もうとしたらマスターがカウンターに戻ってきて、代わりに蒼士郎くんが裏に引っ込んだ。
マスターにお会計をお願いして「また来ます」などと保証のない約束をして店を後にする。


「あゆなさんもう帰るの?」


ところが店の外なのにどこからともなく蒼士郎くんの声がした。
声のした方を振り返る。店の裏の細い路地裏から蒼士郎くんが顔を覗かせていた。
近くのゴミ箱の蓋が開いていて、ゴミ捨てのために店の裏に出たらしいと分かった。


「うん、明日仕事だから」

「まだ19時だよ。あゆなさん平日でも日付変わる直前まで飲んでるのに」

「今日は長居したらほかのお客さんに迷惑でしょ。満席ですって言われて帰っちゃった人も何人かいたよ」

「ふーん、そう」


蒼士郎くんは自分から話しかけたくせに興味なさそう。
開いていたゴミ箱の蓋を閉めて、そのままお店に戻ると思ったらまた私の方に振り向いた。
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